2015年の相続税法改正以降、相続税の課税対象者は増加の一途をたどっています。最近は都市部を中心に地価が上昇しており、「相続が発生したら、相続税がかかるのか?」と不安に思う方も増えてきています。
そんな時、心強いのが、相続税額を小さくすることができるさまざまな「特例」。簡単にご紹介したいと思います。
他人事ではなくなった相続税
相続財産の総額が相続税の「基礎控除額」の範囲内であれば、相続税はかかりません。
かつて、この基礎控除額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」で計算されていました。
ところが、2015年1月1日に施行された相続税法改正により、基礎控除額は、「3,000万円×600万円×法定相続人の数」まで大きく引き下げられました。
国税庁が毎年発表している「相続税の申告事績の概要」によれば、1年間の死亡者数に対する「相続税の申告書の提出に係る被相続人数」の割合は、相続税法改正前までは4%台前半で推移していましたが、改正後は8%を超え、直近2023年では9.9%に達しています。
地価の高い大都市圏では、この割合は、もっと高くなっていると思われます。
改正前までは、相続税は「ごく一部の富裕層にしか関係のないもの」だったかもしれませんが、改正により「他人事ではない」という人が増えており、「相続税の大衆化」という表現も見られるようになりました。
なお、相続財産の財産額を評価するにあたってはルールがあり、このルールに基づいて計算した相続財産の総額が、基礎控除額より大きいかどうか、判断することになります。
特に土地の評価の仕方は難しく、一筋縄ではいきません。「相続税がかかるかどうか不安」という人は、相続発生前に、相続に詳しい税理士にご相談されておくと安心だと思います。
相続税額を小さくすることができる特例とは?
また、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合でも、相続税を小さくすることができる特例を適用すれば、相続税額がゼロになるケースがあります。
相続税を減額できる特例の代表格は「配偶者の税額軽減の特例」と「小規模宅地等の特例」です。
配偶者の税額軽減の特例
配偶者の税額軽減の特例は、配偶者が取得した相続財産が、下記のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。
①1億6千万円
②配偶者の法定相続分相当額
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、相続した土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
被相続人の自宅の土地については、下記の各ケースで適用が可能です。
①配偶者が取得した場合
②同居の親族が取得し、相続税の申告期限まで所有する場合
③配偶者も同居の親族もいない場合に、一定の要件を満たす賃貸住まいの相続人が取得し、相続税の申告期限まで所有する場合
なお、こうした特例を適用するためには、適用後の相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告が必要になりますので、注意が必要です。
まとめ
税制改正や地価の上昇に伴い、相続税が他人事ではなくなってきています。使える特例はしっかり活用し、税負担の軽減を図っていきたいところです。
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