大家さんが急逝すると、家賃はどうなる?シニアの賃貸経営と相続の課題

小規模な賃貸物件の場合、管理会社に管理を頼まず、大家さんが自主管理をされているケースが少なくありません。超高齢化が進む日本で、小規模の賃貸物件を経営するシニアも少なくありません。彼らの多くは、入居者との繋がりを大切に、地域社会にも積極的に貢献しています。

しかし、もし突然、賃貸アパートを経営するシニアが急逝した場合、家賃収入はどうなるのでしょうか?また、物件の管理や収益を子供にどう引き継いでいけばよいのでしょうか?

今回は、シニア世代の賃貸経営と相続における課題について、事例と共にご説明します。

目次

70代のアパート経営者の場合

Aさん(70代女性)は、都内の自宅のすぐ近くに1棟4室の小さな賃貸アパートを所有しており、管理会社を使わず自主管理を行っています。

大家さんとしての仕事が生きがいになっているようで、アパートの前の道路を毎朝丁寧に清掃。入居者から「水回りの調子が悪い」などの連絡が入ると、「よしきた!」とばかりに業者を手配。近隣では、交換する部材選びから修理作業の進め方まで細かく口を出す業者泣かせの大家さんとして知られているそうです。

家賃は、毎月末に入居者各自からAさんの銀行口座に振り込んでもらっているそうですが、「今のところ入金が遅れることもなく、特段の問題はない」とのことです。

そんなAさんから、先日、電話でこんなご質問をいただきました。「私が急に死んだとしたら、家賃は入金できなくなるの?」というものです。

ある相続セミナーで、「ご本人が亡くなった事実を銀行が把握した段階で、ご本人名義の銀行口座は凍結され、預金は引き出させなくなります」という話を聞いたAさんは、家に帰ってから「それなら、入金の方はどうなんだろう?入居者の皆さんが家賃を入金しようと思っても入金できなくなるのでは……?」と改めて疑問に思ったというのです。

結論から言うと、銀行口座の名義人が死亡した事実を銀行が把握すると、その銀行口座は、遺産分割が完了し所定の相続手続きを行うまでの間、引き出しや口座引き落としなどの出金ができなくなるとともに、入金も受けられなくなります。

家賃の振込先であるAさんの銀行口座が凍結してしまうと、入居者の皆さんが家賃の振込手続きを行っても、エラーとなってしまい、Aさんが懸念されている通りの事態が発生してしまうわけです。

Aさんはご主人を既に亡くされており、横浜市内に住むひとり息子のBさんが唯一の相続人となります。

Aさんが急に亡くなったら、Bさんが入居者全員に「Aさんが亡くなったこと」「これに伴い家賃の振込口座が凍結すること」をただちに連絡の上、今後の家賃の支払い口座の変更を通知するなど、必要な手立てを行う必要があります。

自主管理をしている賃貸物件は、元気なうちに管理会社に相談

Aさんは、最近、Bさんと相続の話をすることもあり、先日もBさんから、「俺はサラリーマンとして働いているし、遠くに住んでいるので、おふくろがやっているようなアパートの管理は絶対無理。今のうちに管理会社と契約しておこうよ」と言われたとのことです。

「息子には、『まだまだ元気だし、私の目の黒いうちは、他人任せにしないから』と言い返してやったんだけど、家賃の支払い口座が凍結して、入居者の皆さんにご迷惑をかけるのも嫌だから、そろそろ考えてみようかしら」とAさん。

小規模の賃貸物件を自主管理されている高齢の大家さんからのご相談は比較的多く、少し前には、「退去した元入居者と敷金の返還の件でトラブルになっている。先方から内容証明郵便が送られてきたが、私のことを『認知症』と決めてかかっていて、ひどすぎる」と涙ながらに訴えてこられた80代のご相談者も……。

相続人であるお子さんたちは、賃貸物件について、資産としては興味を示すものの、賃貸経営に伴う体力負担は敬遠するケースが多く、入居者の利便性や安心の観点からも、親世代が元気なうちに管理会社を活用することが望ましいように思われます。

まとめ

「賃貸物件を誰に相続させようか?」「いざという時に、相続人や入居者に迷惑をかけないようにするためには、どんな手を打っておくべきか?」              シニアと家族の相談室は、賃貸経営をされているシニアの皆さんからの相続・終活に関するご相談を数多く受け付けています。提携専門家と連携の上、セカンドオピニオンの提供も可能ですので、お気軽にご相談ください。

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