遺言で指定した相手が遺言者より先に亡くなった場合の対策 ~予備的遺言の活用~

遺言で指定した財産を受け取る相手が遺言者よりも先に亡くなった場合、遺言の効力はどうなるのでしょうか?

今回は、Aさんの事例を通して考えてみたいと思います。

目次

1.事例:遺言作成にあたってのAさんの不安

Aさん(70代女性)は、数年前に夫を亡くし、子供がいません。ご両親も既に亡くなっており、相続人は弟のBさんと妹のCさん(ご主人は既に他界)の2名です。Aさんは弟のBさんとは長年疎遠ですが、妹のCさんとその一人息子であるDさん(Aさんの甥)とは関係が良好で、DさんはAさんを何かと気遣ってくれます。Aさんは、自分の財産をCさんに相続させたいと考えており、その旨の遺言の作成を考えています。そんな中、「Cと私は2つしか歳が違わないので、Cが私より先に亡くなるかもしれない。その場合は、Dに財産をもらって欲しいけれど、『Cに全財産を相続させる』という遺言を作成しておけば、私より先にCが亡くなった場合、私の財産は、Cの唯一の相続人であるDに自動的に渡るということでいいのよね?」と疑問に思われたとのことです。

2. 遺言には代襲相続が適用されない

法律上の相続においては、相続人が先に亡くなった場合に子や孫が代わりに相続する「代襲相続」という仕組みがありますが、遺言にはこの代襲相続が適用されません。そのため、遺言で指定した相手が遺言者より先に亡くなった場合、遺言のその部分は効力を失い、指定されていた財産は法定相続人の共有財産とされます。Aさんのケースで、妹のCさんがAさんより先に亡くなり、Aさんが亡くなった時点で弟のBさんが存命の場合、Aさんの財産はBさんと甥のDさんの共有財産となります。BさんとDさんが遺産分割協議を行うことになり(法定相続分は1/2ずつ)、Aさんの希望とは異なる結果になってしまうかもしれません。

3. 予備的遺言の活用

こうしたリスクを防ぐ方法として、「予備的遺言」があります。予備的遺言とは、遺言で指定した相手が遺言者よりも先に亡くなるリスクに備え、次に相続させる人(もしくは受遺者)をあらかじめ指定しておくことです。Aさんの場合、遺言に「私の死亡時にCが死亡していた場合、全財産をCの長男であるDに相続させる」と一文を加えることで、Cさんが先に亡くなった場合は、DさんがAさんの全財産を相続することが可能になります。。特に、年齢が近い人や健康状態が不安な人を財産を受け取る相手に指定する場合、予備的遺言を活用すると良いでしょう。

4. 遺言の作成のご相談は、「シニアと家族の相談室」へ

「シニアと家族の相談室」では、公正証書遺言の作成をお考えの方に、相続に精通した専門家をご紹介。さまざまなケースを想定したきめ細かいアドバイスが好評です。錦糸町駅前にあり、隣のビルには錦糸町公証役場が入っているという絶好のロケーションも人気です。ぜひお気軽にご相談ください。

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