相続手続きの第一歩として、被相続人(故人)が遺言書を残していたかどうかを確認することが重要です。しかし、事前に遺言書があると聞いていても、遺品からすぐに見つからないこともあります。ここでは、そのような場合に遺言書の有無を確認する具体的な方法について説明します。
1. 公正証書遺言が存在する可能性がある場合
(1)遺言検索システムを活用して作成事実を確認
公正証書遺言は、1989年以降に作成されたものについて、日本公証人連合会がデータベースに登録しています。相続人や受遺者、遺言執行者は、全国の公証役場で遺言の有無を無料で検索することができます(事前予約が必要)。検索結果には、作成年月日や遺言者の名前、公証人名、作成した公証役場などの情報が確認できます。
(2)原本の閲覧や謄本の交付請求で内容を確認
公証役場で保管されている公正証書遺言の内容を確認したい場合、遺言が作成された公証役場で原本の閲覧(1回200円)や謄本の交付請求(1頁250円)が可能です。2019年4月からは郵送での請求も認められています。取得した謄本を使って相続手続きを進めることができます。
2. 自筆証書遺言が法務局で保管されている可能性がある場合
2020年に開始された自筆証書遺言書保管制度により、自筆証書遺言を法務局に保管することが可能になりました。被相続人がこの制度を利用していた場合、遺言書を法務局で確認することができます。
(1)遺言書保管事実証明書の交付請求
遺言書が法務局で保管されているかを確認するには、遺言書保管事実証明書の交付請求を行います。この証明書は、誰でも全国の法務局で手続きが可能で、郵送での請求も可能です。
(2)閲覧や遺言書情報証明書の交付請求で内容を確認
遺言書の内容を確認したい場合、モニターによる閲覧(1回1,400円)や原本の閲覧(1回1,700円)が可能です。閲覧により内容を確認できますが、相続手続きには遺言書情報証明書(1通1,400円)が必要です。この証明書には遺言書の画像が印刷され、証明書をもとに相続手続きを進めることができます。また、この制度を利用した遺言書は改ざんのリスクがないため、家庭裁判所での検認が不要です。
(3)法務局による相続人等への通知
法務局では、遺言者の死亡が確認されると相続人へ通知を行う仕組みがあります。通知には「関係遺言書保管通知」と「指定者通知」があります。これにより、遺言書の存在を相続人が知ることができます。
3. 法務局で保管されていない自筆証書遺言の場合
法務局で保管されていない自筆証書遺言については、故人が保管していた場所を徹底的に捜索する必要があります。遺品の整理中に見つかった場合、家庭裁判所での検認が必要です。この検認は、遺言書の存在と内容を相続人全員に周知するための手続きです。なお、検認前に遺言書を開封すると5万円以下の過料が科せられることがあるため、注意が必要です。
4. 遺産分割協議終了後に遺言書が発見された場合
遺産分割協議が終了した後で遺言書が見つかった場合、通常は遺言の内容が優先されます。しかし、相続人全員が既に行った遺産分割協議の内容に合意し、その内容を維持することに同意した場合は、遺産分割のやり直しをせずに済みます。ただし、遺言書に相続人以外への遺贈が含まれている場合や、特定の相続人が認知されていたり廃除されていたりする場合は、遺産分割協議をやり直す必要があります。
まとめ
遺言書の有無を確認することは、相続手続きの第一歩です。遺言の有無がはっきりしないけれど、公正証書遺言が作成されている可能性がある場合、全国の公証役場で遺言の有無を検索可能です。自筆証書遺言が法務局で保管されている可能性がある場合は、全国の法務局で遺言書保管事実証明書の交付請求手続きを行うことが可能です。遺言の有無の確認だけでなく、相続手続き全般について不安がある場合、専門家によるサポートが必要な場合は、ぜひ「シニアと家族の相談室」にお気軽にご相談ください。