複雑で大変だといわれる相続手続き。遺産分割協議がととのったら、いよいよ相続手続きの最終ステップとして、各種相続財産の名義を被相続人から相続人に変更することになります。
今回は、相続手続きの中でも特に重要な相続財産の名義変更について、その手続きの流れと留意点を、相続に詳しい司法書士の廣木涼さん(アベリアグループ代表 司法書士/行政書士/AFP)に伺いました。
預貯金の名義変更
預貯金の場合、金融機関所定の書類を記入し、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」「相続人全員の戸籍謄本」「相続人全員の印鑑証明書」「遺産分割協議書」などの添付書類を添えて金融機関の窓口に提出します。
金融機関が被相続人の死亡を把握したタイミングで預貯金の口座は凍結されていますが、これらを提出することで、口座解約が可能となり、解約金を相続人の口座に振り込んでもらうことができます。
手続きの流れや必要書類は、金融機関によって異なる場合もありますので、窓口に足を運ぶ前に、まずは金融機関のホームページを確認の上、相続専門ダイヤルなどに問い合わせてみると良いでしょう。
株式の名義変更
上場株式等の場合、証券会社での手続きが必要です。被相続人の口座の残高を相続人の口座に移管する形で手続きを行うため、相続人が同じ証券会社に口座を持っていない場合は、新たに口座開設が必要です。売却して換金したい場合でも、いったん相続人の名義に変更してから売却する必要があります。
不動産の名義変更
不動産の場合、対象不動産所在地の管轄の法務局に相続登記の申請を行います。相続登記にあたっては、対象不動産の固定資産評価証明書に記載された評価額の0.4%相当の登録免許税がかかります。不動産の相続登記の手続きは非常に複雑ですので、司法書士に依頼するのが一般的です。
これまで、不動産の相続登記には法律上の義務や期限はありませんでした。このため、相続登記を怠る人も多く、それが何代かにわたって続いた結果、「不動産登記簿等により、所有者が直ちに判明しない土地」「所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地」が増えてしまいました。
こうした「所有者不明土地」の面積は、九州の土地面積(368万ヘクタール)よりも大きくなっているとの調査結果があります(所有者不明土地問題研究会)。
所有者不明土地は有効活用が難しく、公共事業や災害対応の妨げにもなります。
これ以上、所有者不明土地を増やさないようにするため、2021年4月、相続登記を義務化する改正法案が可決され、2024年4月1日から施行されています。
改正法施行後は、相続人が相続や遺贈で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化され、正当な理由なくこれを怠った場合は10万円以下の過料が課されることとなりますので、注意が必要です。
まとめ
相続財産の名義変更は、相続手続きの最終ステップです。預貯金、株式、不動産と、それぞれ手続きの窓口が異なり、平日でなければ受け付けてもらえないことも多いため、かなり大変です。ついつい先延ばしにしてしまいがちですが、2024年4月1日から相続登記が義務化されたこともあり、早めに済ませておくことをおすすめします。
ご自身で対応するのが難しい場合は、専門家に相談されてみると良いでしょう。「シニアと家族の相談室」では、相続手続きに詳しい専門家をご紹介可能です。お気軽にご相談ください。