相続人が知っておくべき遺品整理の基本とポイント

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するため、被相続人の遺品の所有権は相続人が承継します。このため、被相続人の遺品整理は、原則、相続人が行うことになります。

今回は、遺品整理のポイントについてご説明します。

目次

遺品の仕分けと相続財産の把握

遺産分割や相続税の納税を円滑に行うためには、相続財産の内容を正確に把握する必要があります。被相続人の生前に、相続人との間で財産の内容について、情報共有がなされていない場合、遺品の中から手がかりを見つけ、相続財産の全容を把握していく必要があります。

遺品整理を行う場合、まずは、全ての遺品を以下のカテゴリーに分類する「遺品の仕分け」から着手すると良いと思います。

(1)相続財産の手がかりとなる重要書類等

預金通帳やキャッシュカード、証券会社から定期的に送られてくる取引残高報告書、不動産の権利証(登記済証または登記識別情報)などは、相続財産の内容を正確に把握する上での重要な手がかりとなりますので、見つけたら大切に保管しましょう。

(2)価値のある遺品

宝石や貴金属なども相続財産になります。相続税評価額を把握する方法としては、「購入した店に問い合わせる」「専門家に査定してもらう」などの方法があります。価値のわからない美術品や骨董品がある場合は、古美術商などに査定を依頼してみると良いでしょう。

(3)価値はないけれど残しておきたい思い出の品

遺品の中には、明らかに価値はないけれど残しておきたいものもあります。写真、被相続人の日記や愛用品(高価でないもの)などがこれに該当します。これらは形見分けの対象として良いと思いますが、遺産分割前における遺品はあくまでも相続人全員の共有財産ですので、相続人全員のコンセンサスを得てから行うようにしましょう。

(4)それ以外の不用品

上記(1)~(3)に該当しないものは、不用品として、廃棄処分の対象となります。

相続放棄、限定承認を検討する可能性がある場合の留意点

相続人は、被相続人が亡くなり、自分が相続人であることを知った時)から原則3ヶ月以内(「熟慮期間」といいます)に、①単純承認(「プラスの財産」も「マイナスの財産」も全て相続)、②相続放棄(「プラスの財産」も「マイナスの財産」も一切相続しない)、③限定承認(相続によって得た「プラスの財産」の限度において、「マイナスの財産」を相続)のいずれかを選択する必要があります。熟慮期間においては、相続財産の全容をしっかり把握した上で、文字通り熟慮して、相続についての方針を決める必要があります。

遺品の中から、借用書、滞納している税金や家賃の督促状、消費者金融のレシートといった「マイナスの財産」の手がかりが見つかる場合もありますが、「マイナスの財産」の金額が大きい場合は、相続放棄や限定承認を検討することになります。

相続についての方針を決める前に遺品を処分してしまうと、「相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす」という民法921条の規定により、相続放棄や限定承認ができなくなってしまう可能性があります。相続財産を把握する観点から遺品の仕分けを行うことに問題はありませんが、相続財産の全容が把握できていないうちは、遺品の売却・換金はもちろん、形見分けや不用品の廃棄処分なども行わないようにしましょう。

遺品整理業者に依頼する際のポイント

遺品の量が多い場合、忙しくて対応するのが難しい場合などは、遺品整理業者に依頼するのも1つの選択肢です。

遺品整理の料金は、①作業量に比例する作業コスト、②廃棄処分にかかるコストの2要素から構成されます。

ホームページやパンフレットに掲載されている「1LDK 〇〇円~」といった間取りに応じた料金の目安は、あくまでも目安でしかありません。実際の料金は、遺品の量はもちろん、エレベーターや駐車スペースの有無といった作業環境によって大きく変わってきます。このため、多くの業者は、無料見積もりを行っています。現地に出向き、遺品の量や作業環境等を確認の上、見積書を作成・提示してくれますので、まずは無料見積もりを依頼すると良いでしょう。

見積書を提示されたら、「作業一式〇〇円」といった「どんぶり勘定」ではなく、作業料金や廃棄処分料金などを合理的に算定した上での「積み上げ方式」で作成されているかどうか、チェックしてみると良いと思います。また、スタッフの身だしなみや言葉遣いなど、定性的な部分についてもチェックできると思います。

また、最近は、不用品の中に有価物があれば買い取りを行う業者も増えてきました。買い取り代金との相殺により、結果的にコストを抑えることも可能です。

まとめ

被相続人の遺品整理は、原則、相続人が行うことになります。遺品を適切に仕分けることで、相続財産の把握や分割が円滑に進みます。遺品整理で業者を活用する場合は、無料見積もりを依頼し、料金体系や対応の丁寧さを確認することが大切です。遺品整理についてお悩みの方は、シニアと家族の相談室にご相談ください。適切な業者をご紹介します。

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