公正証書遺言は「作成コストはかかるが、自筆証書遺言に比べて安心できる」と広く知られています。その理由や作成にかかる費用について、詳しく見ていきましょう。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言は、公証人(法務大臣により任命された法律の専門家。元裁判官、元検事など)が作成する遺言書です。全文を自書する必要がなく、形式不備で無効になったり、相続手続きに支障をきたしたりするリスクが極めて小さいことが最大のメリットです。遺言者の死後、家庭裁判所における検認も必要ありません。
自筆証書遺言の場合、「遺言書の作成日時点で、遺言者は認知症を発症していた疑いがある。この遺言書は無効では?」といった遺言者の遺言能力をめぐる争いが発生することがあります。公正証書遺言は、公証人のほか、証人2名が立ち会って作成されますので、こうした争いが発生しにくいというメリットがあります。ちなみに、未成年や相続についての利害関係者は、証人になることはできません。証人の確保が難しい場合は、公証役場に紹介してもらうことも可能です(1名あたり、1万円程度の日当が発生します)。
公正証書遺言の作成場所
通常、公正証書遺言は公証役場で作成されますが、健康上の理由で公証役場に出向けない場合は、公証人が自宅や病院、介護施設等へ出張することも可能です。別途出張費用がかかりますが、遺言者が移動できない状況でも対応してもらえるので安心です。
公正証書遺言の保管
公正証書遺言では、「原本」「正本」「謄本」の3部が作成されます。原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクがなく、安心です。正本は遺言執行者が、謄本は遺言者が保管するのが一般的です。
作成コストについて
公証役場に支払う手数料額は、相続人や受遺者が受け取る財産の価額を基に算出されます。財産が1億円以下の場合、手数料に1万1千円が加算されます。具体的な料金は、財産の総額や受け取る人数によって異なるため、公証役場に確認してみましょう。
また、遺言書の作成にあたっては、公証役場に直接相談することも可能ですが、実際には弁護士や司法書士、信託銀行などの専門家のサポートを受け、遺言書の文案をしっかり作成した上で公証役場に出向く方が多いのが現実です。「シニアと家族の相談室」が提携している司法書士法人アベリアでは、相続全体の課題を整理しながら適切なアドバイスを提供しています。
まとめ
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が関与することで、形式不備や遺言能力をめぐる争いを避け、相続手続きの円滑な進行を保証する安心な選択肢です。費用はかかりますが、その信頼性と安全性は非常に高く、自筆証書遺言よりも多くの人に選ばれる理由です。
遺言書の作成で不安を感じている方は、「シニアと家族の相談室」までお気軽にご相談ください。