公正証書遺言を作成した後に確認しておくこと

公正証書遺言を作成した後、遺言内容に基づいて遺産分割手続きをスムーズに進めるためには、適切な準備を整えることが非常に重要です。本コラムでは、公正証書遺言作成後の注意点を詳しく見ていきます。

目次

公正証書遺言の「原本」「正本」「謄本」の違い

公正証書遺言を作成すると、「原本」「正本」「謄本」の3種類が用意されます。  

原本:公証役場に保管され、遺言者が亡くなった後も外部に出ることはありません。  

・正本:遺言執行に必要な書類で、遺言執行者が保管します。これにより、相続手続きがスムーズに進行します。  

・謄本:遺言者本人が保管するのが一般的で、正本が紛失した場合の代替として使用されます。

子供などの推定相続人を遺言執行者に指定する場合、必ず遺言書を作成したことを伝え、正本を渡しておくことが重要です。

公正証書遺言の検索と謄本の取得

「亡くなった父が公正証書遺言を作成したと言っていたが、正本が見つからない」といったご相談をいただくことがありますが、1989年以降に作成された公正証書遺言は、日本公証人連合会のデータベースに記録されています。このデータベースにより、遺言書の作成年月日、遺言者の氏名、作成した公証役場の情報を全国の公証役場で検索でき、謄本を取得することが可能です。正本が紛失していても、謄本を使用して相続手続きを進めることができるのです。

しかし、謄本を使って金融機関などで手続きを行う際に、「正本でないと対応できない」と言われることがあるようです。このような場合、相続に詳しい司法書士等の専門家を介して手続きを進めることで、金融機関側の理解も得られやすくなり、円滑に処理されるケースが多いようです。

専門家を遺言執行者に指定する場合

遺言執行者として弁護士や司法書士などの専門家を指定するケースもあります。この場合、遺言者が亡くなった際に、専門家が迅速にその事実を知ることができるように、親族や関係者に事前に連絡先を伝えておくことが大切です。この手配を怠ると、遺言執行者が遺言者の死亡のタイミングを把握できず、遺言の内容が実現されなくなってしまいます。信頼できる親族や友人に遺言執行者の連絡先を共有し、遺言執行者とのスムーズな連絡態勢を整えることが大切です。

親族がいない場合の対策

親族がいない場合、遺言執行や死後の手続きが心配になることもあるでしょう。シニアと家族の相談室と提携する一般社団法人よろずパートナーズが提供する「おひとりさま安心パスポート」というサービスでは、見守りサービスを通じた安否確認のほか、入院や施設入居時の連帯保証人や緊急連絡先の引き受けも行います。遺言者が亡くなった場合、タイムリーに遺言執行者に連絡してもらえるため、安心です。ほかにも、認知症など判断能力が低下した場合の支援(任意後見契約)や、葬儀、納骨、遺品整理、役所手続きなど、死後の手続きの一括でサポート(死後事務委任契約)も提供しています。

まとめ

公正証書遺言を作成した後は、遺言執行者に遺言の正本を手渡すようにしましょう。万一、正本が見当たらない場合は、相続に詳しい司法書士等に相談してみましょう。また、遺言者死亡時には、家族や関係者から遺言執行者宛にすみやかに連絡が入る態勢を整備しておきましょう。さらに、親族がいない方は、専門的なサポートを活用することで、遺言執行はもちろん、さまざまな死後の手続きの履行についても安心できます。

遺言書作成をはじめとする相続・終活の生前対策についてお悩みの方は、「シニアと家族の相談室」にぜひご相談ください。専門家による個別相談やセミナーを通じて、最適なアドバイスを提供いたします。

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