相続に際して、特に問題となるのが地方の実家、耕作されていない農地、山林、別荘地といった「売れない・貸せない不動産」です。一般の不動産会社に相談しても解決が難しい場合が多く、出口を見いだせずお悩みの方が少なくありません。今回は、このような処分に困る不動産がもたらす問題について考えてみたいと思います。
処分に困る不動産がもたらす5つの問題
相続のたびに発生する費用
2024年4月1日より、相続登記が義務化されましたが、これは処分に困る不動産についても例外でありません。
相続登記の際には登録免許税や司法書士への報酬といった費用が発生します。これらの費用は、一度の相続ではさほど大きくないかもしれませんが、相続によって不動産が引き継がれるたびに次世代にも同様の負担がのしかかります。
固定資産税や管理費等の負担
不動産を所有し続ける限り、固定資産税や管理費などの負担が発生します。
処分に困る不動産の中には固定資産税がかからないものもあるかもしれませんが、空き地の草刈り費用などの管理費は馬鹿になりません。別荘地の管理費はそれほど高額ではありませんが実利用されていない場合、大きなストレスを感じる方も多いでしょう。
これらの支出は不動産を手放さない限り、永続的に続くことになります。
遺産分割での押し付け合い
処分に困る不動産は、相続人の間で敬遠されがちです。そのため、遺産分割の際には、誰がその不動産を引き継ぐかで押し付け合いが起こることがよくあります。
話し合いがまとまらず、相続人全員の共有名義にすることもありますが、共有不動産は、売却や建物の解体を行う際に全共有者の同意が必要です。
共有者間の関係が悪化したり、代替わりによって疎遠な共有者が加わると、合意形成が難しくなり、トラブルに発展するリスクが高まります。
相続放棄を考える人もいますが、相続放棄をすると最初から相続人ではなかったことになり、「負の財産」としての処分に困る不動産だけでなく、プラスの財産も相続できなくなってしまうため注意が必要です。
所有者の管理責任
空き家や山林など、使用していない不動産であっても所有者には管理責任が伴います。
例えば、火災や崖崩れなどで第三者に損害を与えた場合、損害賠償責任を負う可能性があります。このようなリスクは、不動産を所有し続ける限り、回避することはできません。
詐欺の対象となるリスク
「この土地は売れると思いますのでお任せください。測量費や看板設置費を先払いでお支払いください」と言葉巧みに近づき、お金が支払われたら姿を消すような悪質な不動産ブローカーも存在します。
このような詐欺に引っかかるケースも少なくないため、注意が必要です。
世代間の考え方の違いと親子の対話の重要性
不動産の相続に関しては、世代間で考え方にギャップが見られます。
70代~80代の親世代は「不動産は大切なものだから子どもに残してあげたい」と考える方が多いのですが、40代~50代の子世代は、不動産の所有に伴う負担を考慮し「残されても困る」と感じる人が増えています。
特に、処分に困る不動産の場合、親子でしっかりと話し合い、将来の計画を立てることが重要です。
まとめ
相続に際して、売れない・貸せない不動産は大きな問題を引き起こす可能性があります。費用や負担、トラブルのリスクを避けるためにも、早めに対策を講じることが重要です。処分に困る不動産を抱えている場合は、専門家に相談し、親子で出口戦略を考えることをおすすめします。
この記事で触れた内容に心当たりがある方は、「シニアと家族の相談室」へお気軽にご相談ください。
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