【セミナー講師インタビュー】自分の気持ちを形にする遺言書の書き方

自分の気持ちを形にする遺言書の書き方

終活でしておきたいことの一つ、遺言書の作成。遺言書は自分の意思を家族に伝える大切な書面で、今までの人生で築き上げた大切な財産を、誰にどのように相続させるかを書いておくことで、遺産相続をスムーズにする効力があります。一方、書き方を間違えてしまうと、場合によっては遺言書そのものが遺族間トラブルの原因になってしまうことも……。

今回は、「親も子も心から満足できる遺言」がモットーの遺言の専門家、ヴェルニー行政書士事務所 代表・行政書士 大友康生さんに、自分で遺言書を作成する時の大切なポイントや注意点をお話しいただきました。

目次

遺言書には、遺言書を残す方の気持ちを書き入れる

遺言書を書く時に、一番大切なことはなんでしょう?

一番大切なのは遺された方の気持ちです。

例えば相続した時に、「100万円余分にもらった」「思っていたより500万円少なかった」ということよりも、それを心から納得できるほうがずっと大事だと、私は考えています。

相続の仕事をする中で非常によく感じることですが、「なぜそうしたのか?」ということが分かれば、たいていのお子さんは納得します。

お子さんが納得するためにも親の側から「こういう思いがあるから、自分の財産をこういうふうに分けたい」ということを伝えることは非常に大事だと思います。

ですので、遺言書には財産の分け方だけではなく、遺言書を残す方の気持ちをぜひ書き入れていただきたいです。

気持ちを伝えるにあたって、お手紙などを書くのであれば、それはそれで良いのですが、せっかく労力をかけて遺言書を作るのであれば、ぜひ一言、遺言書を書く方の気持ちも、添えておかれると良いでしょう。

遺言書というと、財産をどう分けるか?を書くものというイメージでした

遺言書を書くにあたって、根本的なところで勘違いをしていらっしゃる方は非常に多いですね。

法定相続分(亡くなられた方の財産を相続する場合にあたり、各相続人の取り分として法律上定められた割合)のことが頭にあるせいか、「配偶者の相続分は2分の1にしなければならないんじゃないだろうか?」とか、「遺留分の準備をしなければならないんじゃないか?」みたいなイメージをお持ちの方が多いです。

しかし、「本に配偶者の相続割合は2分の1って書いてあったから、2分の1にする」というのでは全く主体性のない遺言書になってしまいます。

大事なのは「なぜこういう遺産の分け方をしたいのか」という目的や思いです。それを形にするのが遺言書なんです。

遺言書は何かにとらわれることなく、自由に書いて良いということなのですね

それが基本です。その上で、やはり配慮しなければならないことがあれば、それから配慮すれば良いだけのことです。

80年間、90年間と時間をかけて築き上げてきた大切な財産を、誰にどういうふうに残すかということはとても大事なことです。ある意味、ご自分が生きてきた証とも言えるでしょう。

それを単に「本に4分の1と書いてあったからその通りにする」というのでは、その人の生きてきた証を次の世代に引き継いでいくという、相続の本来の意味が失われてしまいます。

遺言書が必要な人とは

遺言書を遺しておくべき人というのは、どのような方でしょうか?

いくつかありますが、まず絶対に残した方が良いのはお子さんのいないご夫婦です。

それからおひとり様、いわゆる財産を残す方がいらっしゃらない方。そして同性婚の方、男性同士、女性同士で結婚されている方です。

これらの方は、もし遺言書を作成しなかった場合、遺産は自動的に親や祖父母、兄弟姉妹に分配されるので、故人が望まない相続になってしまう恐れがあります。

さらに、財産が不動産しかないという方。これも遺言書を残しておいた方が良いでしょう。

しかし、絶対に遺言書を残すべきだというわけではありません。残された方同士が仲が良く、お互い話し合いで問題を解決できるのであれば遺言書は必要ありません。

遺言書に関しては、インターネット上にさまざまな情報が出ていますが、ああいった情報はどのくらい信用できるものなのでしょう?

その情報が事実として正しいということと、その情報にどんな意味があるかというのは、別だと思っています。

記事にもよるでしょうが、インターネットの記事がすべて間違ったことを書いているというわけではありません。

けれども、その記事で書かれている情報に一体どういう意味があるのか?記事を読む人の人生にとって、どういう意味があるのか?ということまで、考えて読むと良いのかなと私は思ってます。

インターネット上の情報はたとえ事実としては正しくても、必ずしも自分に当てはまるかどうかはわからないということですね?

そこをもう1回見つめ直すことが大事です。

自分は何のために遺言書を残したいのか?

遺言書で誰を守りたいのか?

誰が自分にとって大事な人なのか?

誰が自分を支えてくれるのか?

これらのことを考えた上で遺言書を書くなら、遺言の本や、インターネットの記事などに書いてあるように、皆がみんな「2分の1」「4分の1」となるわけがありません。

ご自分が最後に残される財産は、それが例え数万円しかなくても、やはり長い年月を生きてきて最後に残した人生の証ですから。大事にしたいですよね。

遺言書を作成し、これからの人生をもっと豊かに!

遺言を残すことで、亡くなる前の人生をより有意義にする手法もあると伺いました

わかりやすい例で説明すると、お子様がいなくて、奥様もいないという男性の方がいたとします。でも、ご兄弟がいて、甥姪がたくさんいたとします。

この場合、遺言書を残さなければ、兄弟と甥姪に均等に財産が行きますよね。しかし、相続人の中には「顔も見たことがない」という人もたくさんいます。

ところがその男性が、山形の出身で東京に出てきたという方だったとします。そして、たまたま甥の1人も東京に住んでいて、仲良くしていたとします。

このような場合、顔も知らない甥や姪たちに均等に財産を残すのではなく、仲良くしている甥御さんに「すべての財産を残すから、その分、自分の老後を見てくれないか?」という話がもし、きちんとできるのであれば、ずいぶん安心感が違うのではないでしょうか。

実際に、そういうケースはよくあります。

甥御さんにとっても、たまたま近くにいるから手の空いた時にちょっとおじさんの手助けをするのと、「おじさんは自分のことを考えてくれていて、自分が面倒を見ることに対して、感謝の気持ちを形にしてくれているんだ」と思うのとでは、同じ面倒を見るにしても力の入りようが違ってくるとは思いませんか?

そうですね。わかってくれる人には尽くしたくなると思います

人間、歳を取れば弱ってくるので、誰かの世話にならざるを得ません。その時にはやはり、感謝の気持ちや労いの気持ちを形に表した方が、結局は自分のためになるでしょう。

親孝行とか老後の面倒を見ることは、取引ではありません。お金を貰うから面倒を見るというようなものではありませんが、世話になる人は、その気持ちを形に表すべきです。

「感謝してるよ」と口では言いながら、「遺産はみんなと平等だよ」というのでは、これは本当に感謝してると言えるのでしょうか。本当に感謝しているなら、形に表すべきだと私は思います。

人によっては「お金は関係ない。この人が好きだから、この人のためにやる」という方も、もちろんたくさんいらっしゃいます。であればなおさら、世話になる方が、自分の感謝の気持ちを表した方が良いと思います。

相続で感謝の気持ちを形に残すのですね

さらに、老後を安心、快適に過ごすためには、財産を残すだけではなく、「こういう人に、こういう財産の残し方をする」と事前に話をしておくと良いでしょう。

「親心子知らず、子心親知らず」という言葉がありますが、実際に、残された人が「私はこんなことを望んでなかったのに……」というケースも多いです。

であるなら、親の思いだけで遺言書を作るのではなく、事前に「私はこうしようと思うんだけど、君達どうなんだ?」という話をしておかれるのも有意義かなと思います。

これからの遺言書は、できれば事前に相談し、かつ内容を共有するというのが良いと思ってます。そうすれば、相続でもめることもありません。

皆さんの意見を聞きながら作る遺言書ですね

よくあるんですが、親がお子さん皆に良い顔をして、「あなたが頼りよ」とか、「あなたに財産を残すわよ」と言っておいて、亡くなってみたら全然違ったというケースです。

親が子供を天秤にかけるようなことは、自分のためにもお子さんのためにもなりません。これでは裏切りですからね。

遺言書は事前に話し合いながら作っていくことを前提にしながらも、家族関係によっては話し合いが難しいという場合には状況に応じて調整すれば良いことです。

少なくとも自分を支えてくれる人とは話し合いをして欲しいです。そして、配偶者の方とは絶対に話し合った方が良いです。大事な人、守りたい人の意見は聞かないと。

自分の思いというのは、下手をすると一方通行になってしまいます。それよりは、相手が望んでる方向性と、自分がこうしたいという思いを調和させて、遺言書を作った方が良いんじゃないでしょうか。

ありがとうございました

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