【セミナー講師インタビュー】相続税が高い…原因は遺言書!?遺言書を尊重し、故人を偲ぶ相続とは

相続税が高い…原因は遺言書!?遺言書を尊重し、故人を偲ぶ相続とは

35年以上にわたり、数多くの相続、事業承継の実務に携わってきた、のぞみ国際合同税理士事務所の税理士、樫木秀俊さん。そんな樫木さんに、知らないと損をしてしまうかもしれない、相続税についてのお話を伺いました。 

目次

遺言通りに財産を分割して損をしてしまう? 

相続専門の税理士として活動されていて、一番多いお悩み・相談はどのようなものなのでしょうか。 

自分の財産をどういう風に分けたらいいのか、という生前のご相談ですね。

例えば、お父様がお子様に遺言を残そうとします。その時「どう分けたら子供たちが喧嘩することなく、納得して受け入れてもらえるか?」といった内容のご相談です。 

そういった遺言書の付言事項では、大体「喧嘩しないように、もめないようにみんなで仲良く暮らしてください」と書かれています。 

でも、そのお父さんの遺言書通りに遺産分割してしまうと、かえって相続人が納得しない、というケースが実は多いんですよね。 

というのは配偶者の税額軽減とか、小規模宅地の評価減とか、相続税にはさまざまな特例があるのですが、そうしたものが考慮されていないのです。

なので、ご自身で考えて遺言を書かれた場合、その遺言書に書かれた通りに実行すると、相続人の皆様にとっては税金が高額になってしまってもったいないことになってしまいます。結果的にお父様の遺言書は尊重しつつ、ご家族皆様で遺産分割協議をするということになるんです。 

遺言書はすごく大事です。ただ、遺言書は絶対じゃないんですよね。 

損をしない遺言書を書くには? 

お父様が良かれと思って作った遺言書通りにしてしまうと、かえって相続税がかかってしまう場合があるんですね。 

そうなんです。 

このようなお父様が生前、遺言書を作成する際に、私たち税理士がアドバイスすることは「財産目録を作成すると、相続税について考えやすくなりますよ」ということです。 

その上で、ご家族の絆を考えた場合には、税金が高くなったとしても、こうしたほうが良いとか。 そういったことも付言事項のところで説明しながらお手伝いさせていただきます。  

一番大事なのは、お父様がその気持ちを、考えを、残してくださっていることなんですよね。 

そんなお父様の気持ちを汲み取りつつ、でもそのままではもったいないので、一緒に考えましょうということです。 

遺言書の通りにしたら相続税が高くなってしまい、その結果子供たちが納得できなくなることもあるのですね。盲点でした。 

「子供たちが喧嘩しないように」と思ってお父様が残した遺言書の内容が原因で、望まない喧嘩になってしまうのは悲しいですよね。

でも、もしそうなったとしても「遺言書にこう書いてあるから」と、最終的にご家族皆様で納得されて収拾がつくことも多いですし、やはり遺言書を書くということは、とても重要で、大切なことです。

いわゆる税制上の特例などを、お父様が遺した遺言書にうまく加える形で、落としどころをご家族皆様で決めるという形が多いですね。

相続税も考慮した遺産分割についてご相談するのは、やはり生前でなければ間に合わないものなのでしょうか?それとも亡くなった後からでも、遺言書があれば大丈夫ですか? 

一般的な例としては、お父様が亡くなる前に財産目録を作成させていただいています。 

それからお父様の立場に立って、遺言書のシュミレーションをお手伝いします。 

例えば「税金はこういう風にすればこのくらいになります」という目安の提示や、お父様の気持ちに則って「これは奥様に」「これはお子様に」などの分配ですね。 

それからご家族による第二段階の調整が入るわけです。 

例えばお父様のお気持ちをそのまま反映した遺言書に、「お母様に財産のすべてを託す」と書かれていたとします。

もしその遺言のまま遺産分割をしてしまうと、お母様が健康な状態では特に問題ないのですが、亡くなられた際に「二次相続※」で損をしてしまう場合が多いです。お子様の世代に相続財産が移る時には配偶者控除が当然使えないため、特例なしの相続税の支払いとなってしまいます。

そのため、お父様が亡くなられた時点で、二次相続まで想定に入れた遺言書を用意しておき、お子様世代にある程度財産を移動させておくことが必要です。このように、遺言者の気持ちを汲みつつも、実際的な内容を盛り込んでいくことも大切です。

※旦那様から財産を引き継いだ奥様が亡くなると、お子様は相続の手続きをすることになります。こうした相続を、お子様から見て旦那様に次いで奥様の財産も相続するので二次相続といいます。

遺言書を書くとき、誰に相談すればいい? 

相続の相談はどなたに相談したらいいのですか?

一定程度の財産をお持ちの場合、税金というものが必ずついてくるので、税理士に頼むのも一つだと思います。 

しかし、2億円以上の資産をお持ちの方でしたら、信託銀行ですかね。 

でも、信託銀行はどうしても値段が高くなってきてしまいますね。遺言を引き受ける時に、何十万円とお金がかかります。

なぜ資産をたくさんお持ちの方は、信託銀行に頼むべきなのでしょう?  

理由としては、安心できるからです。個人に遺言執行者を頼んだ場合、遺言執行者も人間なので、命は有限です。一方で信託銀行は法人ですから。仮に担当者が亡くなってしまったとしても、会社が存続する限りは大丈夫です。

私共も法人として遺言執行者になってきっちり対応できるというサービスを行っています。 

突然お金が入ってきた!なぜ? 

これまで対応された中で、印象に残っているご相談などはありますか?

1億円以上の相続財産が突然、ある兄弟に入ったという事例があります。

え⁉すごいですね、どうしてそんなことが? 

このケースでは、ある女性が亡くなられて、その女性のご兄弟2人に、女性の財産の8分の1が相続されています。

近年、ご兄弟が亡くなられて、突然大金が振り込まれているというケースが増えています。しかも中には、異母兄弟がいて、会ったこともない兄弟に財産を渡すといった事例もあります。 

もらう方は良いですが、例えば配偶者がいた場合など、せっかく夫婦で貯めた財産を親しくもない親せきに譲るというのは、複雑な気持になりますね。

ご結婚されていない方や、お子様のいない家庭が増えている今、こういった事例は増えています。これからますます多くなると思いますし、考えなくてはならない問題ですね。 

また、最近ではご自宅を買われたのに、突然のご病気で孤独死される方も多くて。

事件性があっては大変なので、ご親族の方や、ご兄弟が警察の方と一緒に立ち合い、検察官事務所に行き、解剖という形になるのですが、こういった方が1億円以上の財産を残されて、お亡くなりになっているケースも多いんです。 

悲しい事例ですね……。お一人様・お子様のいないご夫婦のための生前準備という題材で来月もセミナーを予定していただいていますが、少しだけお話聞かせていただいてもよろしいでしょうか。 

まず、お子様のいないご夫婦は遺言書を作成することをおすすめします。 

遺言書をおすすめする理由を、わかりやすい例で言いますと、お子様のいないご夫婦がいたとします。そして旦那さんには兄弟がいます。

先に旦那様が亡くなってしまって遺言書を作成していない場合、お2人で築いてきた財産が、旦那様のご兄弟に財産の4分の1が渡ってしまうのです。奥様からしたら少し悔しい思いになると思いませんか? 

また違った例では、私共税理士は財産目録を作成して、それに基づいて遺言書の作成のアドバイスをさせていただいているので分かることなのですが、その方の財産にご先祖様から受け継いだものがあった場合。 

旦那さんの家系で先祖代々受け継いできた財産ですから、これはむしろご兄弟に行くべきだという考え方もあるでしょう。 しかし奥様に、本家の財産が4分の3渡ってしまうのです。もし奥様が亡くなられた場合、その財産を相続するのは奥様のご兄弟になり、旦那様の家系の財産の4分の3が奥様の家系に渡ってしまうのです。 

もちろん、親せきとの関係など、さまざまな事情はありますが、こういった一方の家族が納得のいかない相続とならないように、詳しく対策方法をお教えします。 

次回のセミナー、楽しみにしています。 本日はありがとうございました。 

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