【セミナー講師インタビュー】「この料理には塩分がこれくらい入ってる」という意識を持つことが大事

管理栄養士として、これまで5,000人以上の方にダイエットや減塩などのカウンセリングを行ってきたという和田宵湖さん。代表を務めるDiet Labo PLANETでは、赤ちゃんから高齢者まで気軽に食生活や健康の相談もできる、オーダーメイドの栄養管理も行っています。

今回は、塩分やたんぱく質など、特に高齢者が食事で気を付けたいことについて、お話を伺いました。

目次

高齢者にとってはたんぱく質の不足より、塩分の摂りすぎの方が問題は大きい

管理栄養士を目指されたきっかけについて教えていただけますか?

大学受験のセンター試験が終わってから、本当にやりたいことは何かな?と改めて考えた時に「食べ物のことを勉強したい」と思ったのがきっかけです。管理栄養士が何かということもわからないまま、栄養の大学に入ってしまいました。 

新しくできたばかりの学部で、一期生だった私は先生方にすごくお世話になりました。その中に内科医の先生がいらして、その先生の勧めもあって、病院の管理栄養士になろうと決めました。

ただ、栄養士は医療現場で働く職業としてのカリキュラムが少なく、このままでは病院で働いた時にドクターや看護師さんと対等に働くことはできないのでは?と思い、大学院で医学を学んで、そこから病院に就職しました。

管理栄養士として、高齢者の方にはどのような働きかけをされているのでしょう?

今日のセミナーでもお話しましたように、減塩の大切さについてお伝えすることもありますし、むせなどもあるので、その対応もあります。

また、年齢と共に筋肉は減っていくため、本来なら若い人よりも高齢者の方がプロテインなどを摂らないといけないくらい、たんぱく質が不足しています。ですので、そのようなお話をさせていただくこともあります。

高齢者がたんぱく質不足とは知りませんでした

そうですね。しかし、たんぱく質の不足より、塩分の摂りすぎの方が問題は大きいかもしれません。 

健康寿命の問題は、突き詰めると「介護が必要になるかどうか?」という話だと思います。そう考えると、「たんぱく質が不足することで要介護になるか?」と言われるとそうではありません。

介護が必要となるきっかけは、転倒して骨折といったケースを除けば、やはり塩分の取りすぎによる脳卒中や心筋梗塞などが多いのではないでしょうか?

ただ、高齢者に「塩分!塩分!」と言ってもなかなか習慣は変えられるものではありません。ご高齢の方だけでなく、その前の世代の方々にも、気を付けていただきたいと思っています。

塩分摂取量の目安などはどのように決められているのでしょうか?

日本では厚生労働省で「日本人の食事摂取基準」が作られています。5年に1回改訂されることになっていますので、今の時点で最も新しいものは2020年版ですね。

それには塩分だけでなく、エネルギー、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルと、全部の栄養素についてデータに基づいて出ているんです。

健康な方については年齢と性別ごとに決まっていて、ご病気のある方についてはその疾患ごとのガイドラインを用いて栄養指導をしていきます。

健康な人のガイドラインって、本当にゼロ歳から全部あるんですよ。

ゼロ歳から?そこまで制度化されているんですね 

そうなんです。

また、これまではご年齢が「70歳以上」と全部ひとくくりになっていましたが、2020年版からは65歳~74歳、75歳以上と二分化しています。

さらに、内容も変わっています。「高齢者はたんぱく質を多めに摂ってくださいね」とも言われていますし、塩分の目標量も年々下がってきてます。以前は一日8グラムだったものが今では男性は7.5グラム、女性は6.5グラムというように基準はどんどん下がっているんです。高血圧症の方の目標が6グラム未満なので、いわゆる減塩食と普通の食事には、あまり違いがないのです。

5年に一度更新されるので、栄養士にとっては大きなイベントです。病院で出す食事なども、献立を替えなければなりません。

しかし、自分が塩分を摂りすぎだとわかっていも、日常生活を変えるのは難しいと思います

ご自分でお料理をされている方だったら、目分量で入れていた調味料を、スプーンで測って入れるようにすることはできるかもしれません。

また、「パンや麺には塩分が入っているけれど、お米は塩分ゼロ」といったことを、知っていただくだけでも意味があると思います。

行動のきっかけには「こうなったら良いよね」というポジティブな思いと「やばいからやらなきゃ」という危機感の2種類があると思います。

ダイエットに関しては「もっと痩せたらイケメンなるだろう」というポジティブな思いが働くケースが多いと思います。中には「痩せないと命が危険ですよ」という方もいらっしゃいますが、どちらかというと自分で「がんばりたい」という方が多いです。

減塩に関しては、やはり危機感を持っていただくことが大事だと思います。高血圧は自覚症状がないので、減塩への行動変容は、脳卒中や心臓の病気など、何か大きな病気をするくらい大きな衝撃がないと難しいのです。

減塩で得られるポジティブな面では、例えば夜間の頻尿が軽減するといったことはありますが、そのメリットが減塩に対するモチベーションにつながるかというと、それほど期待はできないと思います。

おそらく危機感がなければ、減塩をしようとは思いません。なので、「塩分を摂り過ぎると、こんなに大変なことになる」と、強く言っておく方が良いと思います。

「この料理には塩分がこれくらい入ってるんだな」という意識を持つことが大事です。

「味噌汁のおかわりはやめとこうかな」、それだけで良いのです。1日3回飲んでいる味噌汁を、2回に減らすだけでも変わります。

赤ちゃんから高齢者まで、人生のさまざまな段階をサポートしたい

代表を務めていらっしゃる Diet Labo PLANET ではどのような活動をされているのですか?

離乳食やアレルギー、スポーツ、メタボなどについて、個別相談などを行っています。

お客様としては企業やアスリートのチームからのご依頼が多いです。高齢者施設やケアマネさんからのご相談もありますが、こちらはまだビジネスというところまでは成長していません。

理想は、ひとつの家庭に1人の管理栄養士、食生活について気軽に相談できるパートナーシップを組めることです。

各家庭に、相談できる管理栄養士さんがいる世界ですね 

はい。

生まれたばかりの赤ちゃんには、赤ちゃんに必要な栄養があります。小学生、中学生と大きくなれば、必要な栄養素も変わりますし、好みも変わってきます。

人の成長の段階で、その時その時でちゃんと栄養について考えていくのが大事だと思っているので、それこそ妊活から管理栄養士として携わっていきたいです。

生まれてくる段階である程度わかる病気のリスクもあります。例えばご家族だと親子で似たような体脂肪率だったり、筋肉のつき方など概ね同じになるんです。結局、親の食生活を直さないとお子さんも同じようになるわけです。

管理栄養士に食事や健康を一緒に考えてもらえるのは心強いですが、今度は管理栄養士が人手不足になりそうですね

実は、資格は持っているけれど管理栄養士として働いてない方は多いです。厚労省のデータでは23万人いる管理栄養士のうち、資格を生かせていない人が8万人もいるんです。

管理栄養士として働ける就職先は限られていますし、お給料もそれほど高くはありません。

例えば1日3食用意する給食施設で働いたとすると、朝5時に出勤して、野菜を10キロ運んできて、千切りして、お皿を洗って、消毒してと、一日中ドロドロになって目いっぱい働いても手取りは……という世界です。

腰も痛いし、残業も多いし、給料は安い。一般事務の方が待遇も良くて給料も良いし、休みもある。

女性の場合は特に、せっかく管理栄養士になっても結婚して子供が生まれたら辞めてしまって、もう戻らないというケースがすごく多いのです。

せっかく資格があっても活躍できない方がそんなにいらっしゃるんですね

そうなんです。なので、今力をいれているのが、ママ管理栄養士を新米ママにマッチングさせるというサービスです。

離乳食相談や、「(お子さんが)偏食で……」とか「アレルギーがあって……」とか、何をしたら良いかわからないというママたちに、実際ママでもある管理栄養士が、専門職として離乳食アドバイスをしています。ママになったからこそできる栄養管理をお届けしたいと思っています。

赤ちゃんから高齢者まで、人生を管理栄養士がサポートすると同時に、管理栄養士の方たちがもっと活躍できる世界を創る活動をされているのですね

基本オンラインのお仕事なので、管理栄養士さんたちが子育て中でも、家に居ても、どこにいても、きちんと管理栄養士としてできるお仕事を創っています。

高齢者には、簡単で良いので、お昼ご飯をバランス良く食べて欲しい

最後に今、終活に取り組もうとされている世代の方々に対して、アドバイスはありますか?

高齢者の方には、簡単で良いので、「お昼ご飯をバランス良く食べて欲しい」ということでしょうか。 

「お昼ご飯をバランス良く食べる」というのは?

皆さん、お昼ご飯を食べていないというわけではありません。ですが、多くの方が、パンだけ、麺だけしか食べていないのです。

「お昼食べてます」という方に食べているものを尋ねると、「菓子パンや麺を食べてます」という方がほとんどです。では「おかずは食べてますか?」と聞くと、「野菜は入れてます」という方はいても、肉や魚は全然召し上がってないんですね。

ご高齢者に限らず、皆さん「運動をしたら筋肉が増える」と思っている方が多いと思いますが、肉や魚などのたんぱく質を食べて運動するから筋肉は増えるわけで、食べずに運動しても、実は消耗するだけなのです。

配偶者に先立たれてしまい、自分だけだと食事を作っても張り合いがないとも伺います

「ひとりなっちゃったから作るのが面倒くさい」と言われることも多いのですが、自分のために作るのが大変だと思ったら、缶詰などでもかまいません。

サバ缶でも良いですし、納豆とか卵とか、簡単で良いんです。

お昼ご飯、ちゃんと食べましょうね。

ありがとうございました

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