配偶者や子供がいない方は、元気なうちに葬儀や納骨、遺品整理などの死後の手続きを引き受けてくれる人を決めておくことが重要です。
甥や姪がいるから、もしもの時はきちんと対応してくれるだろうと安心してはいませんか?
「親族だから……」「血のつながりがあるから……」まさか悪いようにはしないだろうと安易に考えていると、取り返しのつかないことになってしまう場合もあります。
今回は、ご相談者からの事例から、甥・姪などの親族に死後の手続きを依頼する場合の注意点についてお話しします。
ご相談事例「12人いる甥・姪のうち、姉の長男に死後の手続きを頼みたい」
70代の女性から次のような相談を受けました。
「私は主人を亡くし、子供もいません。兄弟姉妹も全員他界していますが、甥・姪は全部で12人います。死後のことは、仲が良かった姉の長男にお願いするつもりです。無償で頼むのも気が引けるので、いくらか包んで渡したいと思います。世間の相場は、どんなものでしょうか?」
死後の手続きを頼む場合は、相続トラブルにならないように事前に対策を
親族に死後の手続きを頼む場合、相続の問題が絡んできます。特に介護や亡くなる前後の対応で貢献度の高い相続人がいる場合、他の相続人との間で遺産分割トラブルに発展することが多いため、事前に対策を考えておくことが大切です。
公正証書遺言の作成
相談者の場合、一番トラブルを避ける方法は、公正証書遺言を作成することです。
例えば、「死後の手続きを頼む甥に全財産を相続させる」や「死後の手続きを頼む甥に全財産の50%を相続させ、残りは他の甥・姪に均等に相続させる」といった内容です。この際、弁護士や司法書士などの法律家を遺言執行者に指定しておくことも重要です。
今回のご相談者の場合、もし遺言書を作成せずに亡くなると、甥・姪合わせて12人で遺産分割協議を行う必要があります。その手間や予想される混乱・トラブルを考えると、親族に死後の手続きを頼まない場合でも、遺言書を作成しておくことが賢明です。
なお、兄弟姉妹や甥・姪のみが相続人の場合、遺留分の侵害が問題になることはありません。
親族に頼む際の難しさ
親族に死後の手続きを頼む難しさを示す事例もあります。
例えば、ある80代の女性は、疎遠だった50代の甥に連絡して、死後の手続きをお願いしました。
すると、甥は「わかった。叔母さんのこれからの面倒は俺が全部見る」と言って家に転がり込んできました。実はこの甥、経済力もなく生活に困窮していていたのです。叔母の家に転がり込んでからは生活費を湯水のように使い、さらに叔母を家政婦代わりにこき使うようになりました。ふさわしくない相手に死後のお願いをしたばかりに、地獄のような日々が始まってしまったのです。
また、80代の男性が姪に葬儀費用として100万円を渡したところ、1年もしないうちにそのお金が生活費として使い果たされてしまっていたという事例もあります。姪は「大丈夫。今どき安い葬儀プランはいくらでもあるから、任せといて」と悪びれもせず、笑っていたそうで、これには男性もあきれて何も言えなかったそうです。
まとめ
親族に死後の手続きを依頼する際は、相続問題や依頼する相手の生活状況、信頼性などを十分に考慮することが必要です。
親族との関係性を再確認し、依頼する相手の信頼性や適性を見極めた上で、適切な遺言書を作成し、法律の専門家を遺言執行者に指定することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
親族に頼むのが難しい場合は、信頼できる第三者や専門家に相談することも一案です。「シニアと家族の相談室」では、終活や相続に関する個別相談やセミナーを開催しています。お気軽にご相談ください。