生命保険は、「遺産分割トラブル防止」「相続税対策」という2つの観点から、相続対策に有効です。
相続対策を目的として主に活用される生命保険は、一時払い終身保険というタイプの保険です。保険料を毎月支払うのではなく、契約時に一括で支払うのが特徴で、被相続人を契約者兼被保険者、相続人を受取人として契約します。
今回は、生命保険の活用方法について、詳しくご説明します。
遺産分割トラブル防止のための活用
生命保険の死亡保険金は、受取人の固有の財産となり、民法上、遺産分割協議の対象となる相続財産とは区別されます。特定の相続人に多めに財産を遺したい場合、その相続人を保険金受取人に指定しておくことで、遺言を作成することなく、確実にお金を遺すことが可能です。
相続人間で被相続人の介護の貢献度に差がある場合、貢献度の高い相続人の寄与分(被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人がいる場合、その相続人の法定相続分に寄与した分を上乗せできる制度)が認められることは、なかなかありません。結果として、遺産分割トラブルに発展するケースが数多くあります。貢献度の高い相続人を保険金受取人とする生命保険に加入しておくことで、その相続人の貢献に報いることが可能となります。
また、代償分割を考える場合も生命保険の活用が有効です。代償分割は、特定の相続人が不動産などの現物財産を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払って調整する遺産分割の方法です。
たとえば、「母が亡くなった場合の相続人は、長男(母と同居)と次男の2名。相続財産に占める自宅のウエイトが大きいが、長男は母の死後も自宅に住み続けたい」というケースでは、自宅を相続した長男から次男に代償金を支払うことになります。
しかし、そのためには、長男に一定の資金力があることが前提となります。そこで、母が元気なうちに自分を契約者兼被保険者、長男を保険金受取人とする生命保険に加入しておきます。母の死後、死亡保険金を受け取った長男は、これを活用してスムーズに次男に代償金を支払うことが可能となります。
相続税対策のための生命保険の活用
民法上、遺産分割協議の対象となる相続財産とは区別される生命保険の死亡保険金ですが、税法上は「みなし相続財産」に該当し、相続税の課税対象となります。
ただ、生命保険の死亡保険金には、「遺族の生活を保障する」という本来の意義があるため、被相続人を契約者兼被保険者、相続人を保険金受取人として契約する生命保険の死亡保険金については、「500万円×法定相続人の数(相続放棄をした人がいても、その相続放棄がなかったものとしてカウントします)」で算出される相続税の「非課税枠」が認められています。
たとえば、相続人が配偶者と長男、次男の3人だった場合、1,500万円(=500万円×3人)までが相続税の課税対象外となります。この非課税枠は、相続人全員が受け取った死亡保険金の合計額について適用さるため、配偶者1人が1,500万円受け取った場合でも、配偶者、長男、次男の3人が500万円ずつ受け取った場合でも、全額が課税対象外となります。
財産を現金として遺した場合、その全額が相続税の課税対象となりますが、死亡保険金として遺すことで、一定額まで相続税の課税対象外とすることができるため、相続税対策を考える人の多くが、生命保険を活用しています。
まとめ
相続対策に活用される一時払い終身保険の加入年齢の上限は、85歳、90歳など、かなり高めに設定されているため、高齢の方の相続対策においても十分活用できる余地があります。
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