相続税対策の手法としてよく使われるのは、「生前贈与」「不動産の取得」「生命保険の非課税枠の活用」の3つです。今回は、この中で、「生命保険の非課税枠の活用」について考えてみたいと思います。
生命保険の非課税枠を使った相続税対策
生命保険の死亡保険金は「受取人の固有の財産」となり、原則、遺産分割協議の対象となりませんが、税法上は「みなし相続財産」に該当し、相続税の課税対象となります。
しかし、被相続人を契約者兼被保険者、相続人を保険金受取人として契約する生命保険の死亡保険金の場合、「500万円×法定相続人の数」で算出される相続税の非課税枠が設けられています。
仮に相続人が配偶者、長男、次男の3人の場合、1,500万円(=500万円×3人)までが相続税の課税対象外となります。
非課税枠は、相続人全員が受け取った死亡保険金の合計額が適用対象となるため、配偶者1人が1,500万円受け取った場合でも、配偶者、長男、次男の3人が500万円ずつ受け取った場合でも、その全額が課税対象外となります。
現金をそのまま相続人に遺した場合、その全額が相続税の課税対象となりますが、現金を生前に保険料として払い込み、死亡保険金として相続人に受け取らせた場合、「500万円×法定相続人の数」までの金額を相続税の課税対象外とすることができるため、相続税の税負担を軽減することができるのです。
2023年度税制改正と暦年贈与のルールの見直し
相続税対策を考える場合、生前贈与もその手段の1つです。
特に「1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた金額が110万円以下であれば、贈与税は発生しない」という贈与税の基礎控除枠を利用した暦年贈与は、幅広く活用されています。
しかし、暦年贈与を行う場合、「相続人または受遺者(遺贈により財産を取得する人)に対して行った相続開始一定期間内の贈与は、相続財産に持ち戻した上で、相続税を計算する」という「生前贈与の加算」への注意が必要です。
生前贈与の加算は、以前は相続開始前3年以内の贈与が対象でしたが、2023年度税制改正要綱により、2024年1月1日以降、相続財産に持ち戻される贈与の対象期間が7年に延長されました。
具体的な影響が出始めるのは2027年1月1日以降の相続から。その後、段階的に対象期間が延長され、完全に「相続開始前7年以内」が対象期間となるのは、2031年1月1日以降の相続から)。
暦年贈与の使い勝手が悪化する中、相続税対策の手段として生命保険を活用する人は、ますます増えてくると思います。
また、生前贈与を行う場合、「生前に相続人に財産を渡してしまうと、無駄遣いしないか心配」という声もよく聞きます。生命保険の場合、死亡保険金を受け取るのは被相続人(=契約者兼被保険者)の死後ですので、その心配はありません。
まとめ
生命保険の死亡保険金は、税法上は「みなし相続財産」に該当し、相続税の課税対象となります。生命保険には、「500万円×法定相続人の数」で算出される相続税の非課税枠が設けられており、これをうまく活用することで、相続税対策が可能となります。
2023年度税制改正により、暦年贈与の使い勝手が悪くなる中、生命保険の非課税枠を活用した相続税対策が、改めて注目されています。ご興味のある方は、シニアと家族の相談室まで、お気軽にご相談ください。